自己組織化とは?身体・運動学習と組織をつなぐ「反応し合う」という視点
自己組織化とは、個々の要素が相互に作用するなかで、全体のまとまりやパターンが生まれることです。誰かが細部まで指示して並べるのとは異なる、秩序の生まれ方を指します。複雑系の研究で扱われる概念であり、「放っておけばうまくいく」という意味ではありません。[概念の参考:Gershensonほか](https://arxiv.org/abs/1903.07456)
株式会社TherapiCo(セラピコ)では、相手の反応を受け取り、自分の見方や働きかけも変えていくことを「反応し合う」と表現しています。身体に関わる仕事から、人材育成、組織づくり、身体経営までを貫く実践姿勢です。
自己組織化という言葉は、この実践を考える一つの手がかりになります。ただし、研究上の概念とTherapiCoの考え方は、分けて説明する必要があります。
## 自己組織化と自己調整は、何が違うのか
自己組織化では、相互作用からどのような「まとまり」が生まれるかに注目します。自己調整は分野によって意味が異なりますが、ここでは、状況や目標に応じて自分の状態や行動を調節することとして使います。
|言葉|この記事で注目すること|問いの例|
|---|---|---|
|自己組織化|要素同士の関係から、全体のパターンが生まれる過程|どのような関係のなかで、この動き方が生まれたのか|
|自己調整|状況に応じて状態・行動を調節すること|変化を受け取り、どこを調節しているのか|
|反応し合う|相手の反応によって自分の関わりも更新する姿勢|受け取ったことで、こちらの働きかけは変わったか|
三つは関係しますが、同義語ではありません。「自己組織化」をそのまま自己治癒力と言い換えたり、望ましい変化が自動的に起きると説明したりすることも避けたいところです。
## 身体・運動学習から自己組織化を考える
J・A・スコット・ケルソーの『Dynamic Patterns: The Self-Organization of Brain and Behavior』は、脳や行動の協調を、自己組織化と非線形力学から捉える研究の枠組みを提示しています。[MIT Pressの書籍紹介](https://mitpress.mit.edu/9780262112000/dynamic-patterns/)
この視点を借りると、身体の動きを「一つひとつの部品に正しい命令を送ること」だけで説明せず、身体各部や環境との関係から考える余地が生まれます。
たとえば、コップを取る場面を考えてみます。これは実際の症例報告ではなく、見方を説明するための例です。コップの位置、椅子との距離、身体を支える場所が違えば、同じ「手を伸ばす」という課題でも条件が変わります。
そこでTherapiCoが大切にしたいのは、手の動きだけを見て指示を増やす前に、何を手がかりに動こうとしているのか、どこで支えを得ているのかを確かめる姿勢です。関わる側が位置や伝え方を変えたら、次に起きる反応を受け取る。その反応に合わせて、さらに関わりを変える。
「自己組織化を引き出す」という表現を使うなら、私たちはこのように、動きが生まれる条件と、その変化を丁寧に見る仕事として説明したいと考えています。研究上の枠組みだけで、個別の支援の効果が証明されるわけではありません。
## 組織の自律性を「反応し合う」から見る
組織について考えるときも、情報が届く経路や、働きかけを変えられる条件に目を向けられます。
たとえば、会議で現場の困りごとが報告されたとします。「分かりました」と返事をして会議が終わる。報告した側からは、判断や仕組みがどう変わったか見えない。こうした場面を想定すると、情報は伝達されても、次の行動を変える往復が閉じていると考えられます。
この場合、問いは「なぜもっと主体的に発言しないのか」だけでは足りません。誰が判断を引き受けるのか。現場には何を決める権限があるのか。試した結果を、いつ、どこへ返せるのか。報告を受けた経営側も何を変えるのか。
TherapiCoの「身体経営」では、身体への関わりから得た視点を、こうした組織の情報・役割・関係の問いに翻訳して考えます。身体の「感覚入力」を組織の「現場から届く情報」に置き換えたなら、次に見るのは実際の情報経路です。身体にたとえるだけで終わらせず、調べる場所を具体化します。
もちろん、組織には権限、責任、制度があり、身体と同じ仕組みではありません。この接続は実践上の見立てです。自律を願うなら、相談先や判断の境界も含めて設計する必要があると、私たちは考えています。
## 自己組織化に関心を持った人のための関連書籍
同じ言葉を使う本だけでなく、近くにある問いから読むと、身体・ケア・組織のつながりを考えやすくなります。以下は同一理論の一覧ではなく、異なる入口です。
**身体と協調を考える:J・A・スコット・ケルソー『Dynamic Patterns』**
脳・行動のパターンを自己組織化から扱う専門書です。運動学習や協調ダイナミクスへの関心から、理論的な背景をたどる入口になります。MIT Press、1995年。[出版社](https://mitpress.mit.edu/9780262112000/dynamic-patterns/)
**組織全体の学習を考える:ピーター・M・センゲ『学習する組織――システム思考で未来を創造する』**
人とチームの学習能力を、システム思考とともに考える本です。「個人が勉強すること」と「組織が学ぶこと」の違いを考えたい人への入口になります。英治出版、邦訳2011年。[出版社](https://eijipress.co.jp/products/2101)
**自主経営を考える:フレデリック・ラルー『ティール組織』**
自主経営、全体性、存在目的を重視する組織の枠組みを紹介しています。組織の自律に関心があるときの接点ですが、役職や管理をなくせばよい、とこの記事では読み替えません。英治出版、邦訳2018年。[出版社](https://eijipress.co.jp/products/2226)
**意志とケアを考える:國分功一郎『中動態の世界――意志と責任の考古学』**
意志と責任の捉え方を問い直す哲学書です。「本人が決めた」「周囲が変えた」という説明だけで、変化を捉えきれるのか。その問いを深める補助線になります。医学書院、2017年。[出版社](https://www.igaku-shoin.co.jp/book/detail/87748)
**創発・再生を考える:河本英夫『損傷したシステムはいかに創発・再生するか――オートポイエーシスの第五領域』**
タイトルが掲げる、損傷したシステムの創発・再生という問いから探索を広げる一冊です。オートポイエーシスを自己組織化と同じ言葉として扱わず、別の理論的背景としてたどる入口に置きます。新曜社、2014年。[出版社登録書誌](https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784788513709)
これらの書籍がTherapiCoの実践を検証・推奨しているという意味ではありません。それぞれの分野の議論と、私たち自身の実践の問いを往復するための案内です。
## よくある問い
### 自己組織化を大切にするなら、支援者やリーダーは何もしないのでしょうか
TherapiCoでは、関わった結果を受け取り、次の関わりを変えることを重視します。待つことも、具体的に支えることも、その場で何が起きているかを確かめたうえで選びます。放任を原則にする考えではありません。
### 「反応し合う」は、相手に合わせることですか
違う意見を返すことも含みます。相手の反応を受け取ったうえで、自分の考えや境界を伝える。相手に同じ考えを求めるための言葉にはしません。代表自身にも返ってくる問いです。
### 身体への支援と組織づくりは、同じ方法で行うのですか
対象ごとの知識・方法・責任は異なります。共通するのは、目の前の反応から自分の関わりを更新する姿勢です。一つの方法をあらゆる対象に適用する、という意味ではありません。
TherapiCoにとって「反応し合う」は、事業を並べたあとに添える標語ではありません。身体、人、組織へ関わるときに、自分たちが何を受け取り、何を変えるのかを確かめ続けるための言葉です。
**執筆:小曽根龍一|株式会社TherapiCo 代表取締役・理学療法士**
[公式プロフィール](https://therapico.co.jp/staff/20240919-1426/) / [TherapiCo公式サイト](https://therapico.co.jp/) / [個人note「身体経営編集室」](https://note.com/ryuuichi_kosone)
TherapiCo-セラピコ-相模原
住所:神奈川県相模原市緑区橋本1丁目17−20 塚田クリニックハウス 1F
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