ALSで首が下がる・歩きづらくなるとき、リハビリでできること|自費リハビリの一症例
「最近、首が下がってきてしまう」
今回ご紹介するのは、そんなお悩みをきっかけにTherapiCoの自費リハビリを利用されているALS(筋萎縮性側索硬化症)の方です。
関わり始めた当初は、徐々に首を起こしていることが難しくなってきていました。
施術とご自身で行うセルフトレーニングを継続した結果、首を起こした状態を以前より維持できるようになりました。
その後、病気の進行とともに「歩きづらさ」や「ハムストリングス(太ももの裏側)が強く張る」という新たな問題が出てきましたが、身体の使い方を改めて評価し、施術とセルフトレーニングを調整することで、現在はこれらの症状も軽減しています。
ALSのような進行性疾患に対するリハビリでは、以前と同じことを続けるのではなく、「今の身体では何が起きているのか」をその都度捉え直すことがとても重要だと考えています。
最初のお悩みは「首が下がってきてしまう」こと
ご相談いただいた当初、一番困っていたのが、首を起こした状態を保ちづらくなってきたことでした。
首が下がると、単に「前を向きにくい」という問題だけではありません。
人と話す、食事をする、外を見る、歩くなど、日常生活のさまざまな動作に影響します。
こうした状態を見ると、「首の筋力が弱くなっているのだから、首を鍛えればいい」と考えたくなるかもしれません。
しかし私たちは、首だけを切り取って考えません。
「首の問題」を首だけの問題として見ない
理学療法士として身体を見るときに大切にしているのは、
「その場所に症状があること」と
「その場所だけに原因があること」は同じではない、
という考え方です。
頭は首だけで支えられているわけではありません。
胸郭や体幹、骨盤、その下にある足まで含めた身体全体が土台となり、その上で頭部の位置がコントロールされています。
そこで今回も、単に首の筋力だけを見るのではなく、
首を起こす時に身体のどこを使っているのか。
体幹はどのように支えているのか。
必要以上に頑張っている部分はないか。
姿勢を変えることで頭を支えやすくならないか。
といった視点から身体全体を評価していきました。
施術によって身体を動かしやすい状態に整えるだけでなく、ご本人にも身体の使い方を確認していただき、自宅でも継続できるセルフトレーニングを組み合わせました。
その結果、以前よりも首を起こした状態を維持できるようになっていきました。
病気の進行とともに、課題も変わっていく
ALSは進行性の疾患です。
そのため、一度身体の状態が良くなったからといって、その時に行っていたリハビリをずっと繰り返せばいいわけではありません。
身体の状態が変われば、必要な支援も変わります。
この方にも、その後新しい変化が現れました。
「以前より歩きづらくなってきた」
そして、
「太ももの裏側がすごく張る」
という症状です。
ハムストリングスが張る=ハムストリングスが悪い、ではない
太ももの裏側にあるハムストリングスが張っている場合、ストレッチやマッサージをしたくなるかもしれません。
もちろん、それが必要な場合もあります。
一方で、臨床ではもう一つ考えなければならないことがあります。
なぜ、その筋肉がそこまで頑張っているのか?
ということです。
歩くためには、身体を支えながら重心を前へ運び、左右の脚へ体重を移し、次の一歩を出す必要があります。
身体のどこかが使いづらくなると、別の場所がその仕事を補おうとします。
すると「悪い筋肉だから硬くなった」のではなく、身体を何とか支えるために過剰に働き続けた結果として、張りを感じていることがあります。
その場合、張っている場所だけを緩めても、身体が同じ使い方をしていれば再び負担が集中してしまいます。
「どこが悪いか」ではなく、「身体がどうやって動こうとしているか」
TherapiCoでは、身体の一部分だけでなく、動作全体を見ながら評価を進めます。
今回も歩行の中で、
どのように身体を支えているのか。
どこで体重を受けているのか。
どの部分が必要以上に頑張っているのか。
身体全体の連動をもう少し引き出せないか。
といった点を確認しながら、施術内容を組み立て直しました。
さらに、施術を受けている時間だけ身体が楽になることを目指すのではなく、ご本人が普段の生活の中でも身体を整えられるようセルフトレーニングを設定しました。
施術とセルフトレーニングを継続する中で、歩きづらさやハムストリングスの張りは軽減し、現在は比較的落ち着いた状態を維持されています。
進行性疾患だからこそ「今の身体」を見る
ALSに対するリハビリを考える時、
「進行する病気なのだから、リハビリをしても意味がないのではないか」
と感じてしまう方やご家族もいらっしゃるかもしれません。
しかし、「病気そのものの進行」と「今の身体をどう使えているか」は、分けて考える必要があります。
病気の進行自体をリハビリで止められると考えているわけではありません。
一方で、その時に残されている身体機能をどう使うか、過剰な負担をどう減らすか、日常生活をどう工夫するかという部分には、リハビリテーションが関われる可能性があります。
日本神経学会の情報でも、ALSは患者さんによって経過が大きく異なり、それぞれに合わせた対応が必要であるとされています。
だからこそ、
「ALSならこの運動」
という画一的な方法ではなく、
今、この方の身体では何が起こっているのか。
そこから考えることが重要です。
「できなくなったこと」だけでなく、「まだ使えるもの」を探す
進行性の神経疾患に関わっていると、どうしても「できなくなったこと」に目が向きます。
筋力が落ちた。
歩きづらくなった。
首が下がるようになった。
もちろん、それらを正確に把握することは必要です。
ただ、理学療法士として私が同じくらい大切だと感じているのは、
「今、まだ何が使えるのか」
を見ることです。
姿勢を少し変えたらどうなるか。
支える場所を変えたらどうなるか。
感覚の入り方が変わったら、動きはどう変わるか。
余計に頑張っている場所を減らしたら、別の動きが出てこないか。
実際の身体には、検査上の筋力だけでは説明できない反応が現れることがあります。
だから私たちは、病名だけを見て「ここまで」と決めるのではなく、その時々の身体から可能性を探します。
ALSの方、ご家族へ
ALSでは、身体の状態が変化していく中で、
「この症状は病気だから仕方ないのか」
「運動した方がいいのか、休んだ方がいいのか」
「今のリハビリでいいのだろうか」
と迷う場面も多いと思います。
そんな時は、「もっと頑張って運動する」ことだけが答えではありません。
今の身体がどのように動いているのかを一度整理し、その状態に合わせて方法そのものを変えていくことも一つの選択肢です。
TherapiCoでは、相模原市・橋本を拠点に、理学療法士によるマンツーマンの自費リハビリを行っています。
病院や介護保険でのリハビリと併用しながら、「もっと自分の身体について詳しく見てほしい」「今できることを一緒に考えてほしい」というご相談にも対応しています。
進行性の疾患であっても、その時の身体には、その時にできることがあります。
私たちは、その小さな可能性を身体から一緒に探していきたいと考えています。
本症例について
本記事は実際の一症例をもとに、個人が特定されない形で紹介しています。本症例でみられた変化はすべてのALSの方に当てはまるものではなく、同様の結果を保証するものではありません。
ALSは症状や進行速度、呼吸状態、疲労の出方などに個人差があります。運動やセルフトレーニングについても、身体状態や主治医からの指示等を踏まえて個別に設定する必要があります。
介入期間:[実際の期間を記載]
実施頻度・回数:[実際の頻度・回数を記載]
費用:[実際に本症例で発生した費用または料金体系を記載]
主な注意点:疲労や筋肉痛、呼吸状態等を確認しながら、その日の身体状態に応じて運動量・施術内容を調整しています。
参考:日本神経学会「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」および「筋萎縮性側索硬化症(ALS)診療ガイドライン2023」
TherapiCo-セラピコ-相模原
住所:神奈川県相模原市緑区橋本1丁目17−20 塚田クリニックハウス 1F
NEW
-
2026.09.18
-
2026.09.07自己組織化とは?身体...自己組織化とは、個々の要素が相互に作用するなか...
-
2026.08.27神奈川リハビリテーシ...神奈川リハビリテーション病院にて、1〜3年目の理...
-
2026.08.25相模原市と協定を結び...抱っこして、しゃがんで、床から立ち上がる保育や...
-
2026.04.15体の軸は体幹の中心に...体の軸は体幹の中心にない——脳卒中リハビリを変え...
-
2026.04.08脳卒中後のリハビリで...脳卒中後のリハビリで、麻痺した足より先に整える...
-
2026.04.01体幹の安定は「背中の...体幹の安定というと 腹筋 インナーマッスル ...
-
2026.03.30腰を安定させるのは「...腰の安定というと 腹筋を鍛える 体幹トレーニ...